時効の起算点

文責:所長 弁護士 岩崎友哉

最終更新日:2024年05月29日

1 時効の起算点から一定期間経過すると消滅時効の援用ができる

 借金の返済にお悩みの方が債務整理をされる際、消滅時効の援用はとても重要なものとなります。

 債務の中に、もし消滅時効が完成しているものがあれば、消滅時効の援用をすることで返済を免れることができるためです。

 借金等の債務の消滅時効は、消滅時効の起算点から5年(一部例外として10年のものもあります)を経過することで完成します。

 そのため、消滅時効の起算点がいつであるかという点が重要になります。

 時効の起算点には様々なパターンがありますが、今回は債務整理において特に重要となる、貸金業者等から金銭を借り入れた場合の時効の起算点について説明します。

2 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものがない場合

 金銭の返済を求められる権利(債権)は、「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間」または「権利を行使することができる時から十年間」で消滅します。

 

 【参考条文】(民法)

 (債権等の消滅時効)

 第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

 二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

 (第2項以下略)

 参考リンク:e-Gov法令検索(民法)

 

 「権利を行使することができる時」は、期限の定めのある債権の場合には、期限の到来時のことをいいます。

 貸金業者等からの借入れの場合、一定期間または一定回数返済を滞納した場合には、期限の利益を喪失する旨の条項が定められていることがあります。

 この場合には、期限の利益を喪失した時点が消滅時効の起算点となります。

 「債権者が権利を行使することができることを知った時」については、金銭消費貸借契約等で定められた給付に関する権利の場合、通常であれば「権利を行使することができる時」と一致します。

 そのため、期限の利益を喪失した日から5年間で、貸金業者等からの借入れに関する債務は消滅することになります。

3 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものがある場合

 貸金業者等から、金銭の返済を求めて訴訟が提起され、判決が確定した場合や、訴訟上の和解をした場合には、判決確定日、和解成立日が消滅時効の起算点になります。

 そして、この起算点から10年が経過しないと、債務の消滅時効は完成しません。

 

 【参考条文】(民法)

 (判決で確定した権利の消滅時効)

 第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

 参考リンク:e-Gov法令検索(民法)

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