借金の時効と債務の承認に関するQ&A
Q債務の承認とはなんですか?
A
債務の承認とは、消滅時効が完成したことによって利益を受けるべき者(つまり返済を免れることができる人)が、借金などの債務(貸金業者等の債権者からみた債権)が存在することについて、債権者に対して表示をすることをいいます。
債務の承認には時効の更新(中断)を発生させる効果がありますので、債務の承認をすると消滅時効は新たに進行を始めることになります。
消滅時効が完成した後に、債務の存在を認めるような行為をした場合には、民法上の「承認」にはならないものの、判例によって信義則上、消滅時効の援用をすることができなくなるとされていますので、注意が必要です。
【参考条文】(民法)
(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
参考リンク:e-gov法令検索(民法)
Qどのようなことをすると債務の承認とみなされるのですか?
A
債務の承認に該当する代表的な行為としては、少額であっても返済をしてしまうこと、債務の存在を認める文書(債務承認書などと呼ばれることがあります)へ署名押印すること、返済する意思はあるが返済の猶予を求めることが挙げられます。
いずれの行為も、債務が存在することを認めていることが、客観的に示されてしまう行為です。
なお、債務の存否を調査すること自体は、は債務の承認にはあたらないとされています。
Q時効完成前に債務の承認をしたらどうなりますか?
A
債務の消滅時効が完成する前に債務の承認をしてしまうと、時効が更新されますので、承認をした日から、原則としてさらに5年(一部の債権については10年)が経過しないと消滅時効が完成しないことになります。
Q時効完成後に債務の承認をしたらどうなりますか?
A
債務の消滅時効が完成した後に債務の承認に該当する行為をしてしまった場合も、さらに5年(一部の債権については10年)が経過しないと消滅時効が完成しなくなってしまいます。
このことは民法の事項に関する条文には定められておりませんが、最高裁判例において、信義則上時効の援用ができなくなるとされています。