時効と催告
1 時効と催告の関係
消滅時効の完成が迫っている際、催告を行うと、消滅時効の完成が6か月間猶予されます。
催告は、時効完成猶予事由とも呼ばれます。
催告とは、専門的な表現をすると、債権者が債務者に対して行う債務の履行を請求する意思の通知をいいます。
催告の方法は、特に法律上決められてはいませんが、実際に催告が行われたことを後で客観的に証明することができるようにするために、実務上は配達証明付きの内容証明郵便で行うことが多いです。
催告は、あくまでも一時的に消滅時効の完成を停めるだけですので、6か月の猶予期間の間に訴訟を提起するなどして、時効の中断(更新)をします。
なお、催告によって時効の完成が猶予されている間に、再度催告をしても、さらに時効の完成が猶予されない旨が法律で定められています。
【参考条文】(民法)
(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
参考リンク:e-gov(民法)
以下、貸金業者等からお金を借り入れた方の視点で、催告が用いられる可能性がある場面について説明します。
2 借入金の債務の消滅時効が迫っている場合
貸金業者等から借り入れた後、何らかのご事情によって支払いが困難になってしまい、滞納をしてしまってから長期間が経っているということがあります。
そして、消滅時効の完成が近くなった際、貸金業者等が消滅時効の完成を防ぐために、まず債務者の方に対して催告を行い、その後訴訟を提起して時効を更新するということが考えられます。
3 過払い金返還請求権の消滅時効が迫っている場合
過払い金返還請求権は、令和2年3月31日以前に最後の取引した日がある場合には、最後の取引の日から10年で消滅時効が完成します。
令和2年4月1日以降に最後に取引をした場合、最後の取引の日から10年が経過するか、または過払い金を請求できることを知ってから5年が経過すると、過払い金返還請求権は時効によって消滅します。
そのため、最後の取引の日から長期間が経過している場合には、配達記録付き内容証明郵便で催告をするとともに、取引履歴の提供を求めるということをしておきます。
そして、取引履歴を確認し、消滅時効が迫っていることが判明した場合には、催告で消滅時効の完成が猶予されている期間内に訴訟を提起します。