時効を援用すると住宅ローンの審査に影響するか
1 消滅時効の援用により住宅ローン審査は通りやすくなる可能性がある
消滅時効の援用をする場面というのは、長期間貸金業者等に対する債務の返済を滞納している状態であると考えられます。
そのため、一般的には、信用情報に事故情報が登録されており、住宅ローンの審査は厳しくなります。
消滅時効の援用をすることで、債務が消滅した扱いになることから、消滅時効援用後、一定の期間が経過すると、信用情報から事故情報が抹消され、住宅ローンの審査が通りやすくなる可能性があります。
ただし、借り入れをしていた貸金業者等の内部情報は抹消されるとは限りませんので、当該貸金業者等で住宅ローンを組むことは困難になるといえます。
なお、貸金業者等から債権回収会社に債権譲渡が行われた場合、債権譲渡の日から一定期間が経過すると信用情報から事故情報が抹消される可能性もあります。
以下、それぞれについて詳しく説明します。
2 信用情報の事故情報の扱い
CICやJICCなど、信用機関に加盟している貸金業者等から借入れをし、返済を一定期間滞らせてしまうと、信用情報に事故情報が登録されます(いわゆるブラックリスト)。
事故情報は、基本的には滞納状態が続いている限り抹消されません。
そのため、この状態では住宅ローンの審査が厳しくなり、審査が通らないということもあります。
消滅時効を援用すると、法律上は債務(貸金業者等からみた債権)が消滅しますので、消滅時効の援用から5年程度経過すると、事故情報は抹消されることになります。
そのため、消滅時効の援用をした場合には、一定期間経過後に信用情報を取り寄せて、事故情報が残っていないかを確認したうえで住宅ローンの審査に臨むことをお勧めします。
3 借り入れをしていた貸金業者等の内部情報
消滅時効の援用をすることで、信用情報の事故情報は抹消されることになりますが、借り入れをしていた貸金業者等の内部においては、長期間滞納していたという記録は残り続けます。
消滅時効の援用は、合法的に債務の返済を免れるものとはいえ、貸金業者等からすると、残債務の返済を一切受けることができなかったことに変わりはありません。
そのため、もし信用情報の事故情報が抹消されたとしても、消滅時効の援用の対象となった貸金業者等で住宅ローンを組むことは困難になると考えられます。
4 債権回収会社に債権譲渡がされた場合
借り入れをしていた貸金業者等から、債権回収会社に債権(債務者の方からみた債務)が譲渡され、当該債権回収会社から返済の請求がされたため、消滅時効の援用をするというケースもあります。
この場合、債権回収会社へ債権譲渡をした時点で、元の借入先である貸金業者等は債権を回収した扱いになるので、債権譲渡をした日から5年程度経過することで事故情報が抹消されると考えられます。