故人の借金に時効はあるのか

文責:所長 弁護士 岩崎友哉

最終更新日:2024年05月09日

1 故人の借金も時効によって消滅します

 結論から申し上げますと、お亡くなりになられた方の借金(債務)は、法律に定められた一定の期間を経過すると、時効中断(更新)事由がない限りは、時効によって消滅します。

 お亡くなりになられた方(被相続人)の借金に関する消滅時効の完成が問題になる場面は、相続人がいらっしゃるケースであるかと考えられます。

 以下、債務を負った方が亡くなられた場合の相続人への影響と、消滅時効の完成について説明します。

2 債務を負った方が亡くなられた場合の相続人への影響

 借金などの債務を負った方が亡くなられると、その方の相続人は、債務を相続することになります。

 相続人の方が複数人いらっしゃる場合には、亡くなられた方の債務は法定相続割合に基づいて各相続人に引き継がれます。

 相続人の方が引き継ぐのは、あくまでも亡くなられた方の債務なので、債務の法的な性質も基本的には変わりません。

 

【参考条文】(民法)

(相続の一般的効力)

第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

(法定相続分)

第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

参考リンク:e-gov法令検索(民法)

3 消滅時効の完成について

 2で説明しましたとおり、亡くなられた方の債務を相続人が引き継いだ場合、当該債務の法的性質は変わりません。

 そのため、消滅時効の起算点は、亡くなられた方が滞納を開始した日(正確には期限の利益を喪失した日)となります。

 相続開始日(被相続人が亡くなられた日)の時点で、亡くなられた方の債務において消滅時効が完成していた場合、その相続人は消滅時効の援用をすることができます。

 また、仮に相続開始日において消滅時効が完成していなかったとしても、亡くなられた方が滞納を開始した日から消滅時効が完成する期間(貸金業者等からの借入であれば基本的には5年間。一部例外として10年間の債務もあります。)経過すれば、相続人は消滅時効の援用をすることができます。

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