時効の援用にかかる期間

文責:所長 弁護士 岩崎友哉

最終更新日:2024年10月01日

1 消滅時効の援用にはあまり時間はかかりません

 消滅時効の援用には、通常であればあまり時間はかからず、多くの場合弁護士に依頼してから概ね1か月程度で完了します。

 ただし、消滅時効の援用に時間を要するケースもあります。

 ここでは、まず消滅時効の援用の流れを説明し、そのうえで例外的なケースについて説明します。

 

2 消滅時効の援用の流れについて

 消滅時効について弁護士に相談するきっかけには様々なものがあります。

 主なものとしては、返済を滞納してしまってから長期間が経過し、債権者から返済を求める通知書面が届いたことや、債権回収会社から訴訟を提起されたことなどが挙げられます。

 いずれにしても、最後の返済から長い時間が経っており、消滅時効の援用ができる可能性がある場合には、まずは弁護士にご相談をいただきます。

 債権者等から送付されてきた書面には、金銭を借り入れた債権者の名称、最後に返済した時期などが記されていますので、これらの情報を元に対応方針を検討します。

 検討の結果、消滅時効の援用が可能であると判断した場合、弁護士から債権者に対して受任通知を送付します。

 場合によっては、検討した結果、任意整理など、他の方針を取るという方針になることもありえます。

 受任通知送付後、2週間~1か月程度で、債権者から取引履歴が提供されます。

 取引履歴の内容を確認し、期限の利益を喪失してから一定の期間が経過しており、かつ債務名義等がないなど、消滅時効が完成しているようであれば、債権者に対して消滅時効を援用する旨の内容証明郵便を送付し、完了となります。

 

3 消滅時効の援用に時間がかかるケース

 中には、債権者から特に連絡が来ているわけではないものの、かなり前に返済を滞納し、長い時間が経過していることから、消滅時効の援用をしたいというケースがあります。

 しかし、最後の返済時期の記憶が曖昧である場合、消滅時効が完成しているかが正確には分かりません。

 このような場合には、明らかに消滅時効が完成したといえるタイミングまで待ってから消滅時効の援用をすることがあります。

 時効が完成したかどうかが曖昧な段階で、うかつに債権者に連絡をしてしまうと、消滅時効完成前であると債権者が訴訟を提起するなどして、時効が中断(更新)されてしまう可能性があるためです。

 債権者から訴訟が提起されている場合にも、消滅時効の援用にはやや時間を要します。

 訴訟の場合には、まず答弁書に消滅時効を援用する旨を記載し、裁判所へ提出します。

 そうすると、多くの場合、債権者は訴訟を取り下げます。

 その後、消滅時効の援用をしたことを客観的な資料の形で残すため、改めて内容証明郵便を送付して終了となります。

時効の相談で必要となる資料

文責:所長 弁護士 岩崎友哉

最終更新日:2024年09月04日

1 消滅時効の援用のご相談でお持ちいただきたい資料

 結論から申し上げますと、実務上、借金等の債務についての消滅時効の援用を検討するために必要な情報は、債権者(貸金業者等)の名称と、最後に返済をした日(正確にはその後訪れる返済期限)です。

 貸金業者等から借入れをした際の債務は、消滅時効の起算点(期限の利益を喪失した日)から5年間経過すると、消滅時効が完成します。

 なお、債務によっては、消滅時効の完成までの期間が10年間であることもあります。

 債務整理の実務における消滅時効の援用には、いくつかのパターンがあります。

 以下、パターン別に、ご相談の際に必要な資料を説明します。

 

2 訴状または支払督促が届いた場合

 消滅時効が完成している債権(債務者の方から見た債務)であっても、貸金業者等は訴訟を提起したり、支払督促の申立てをして、返済を請求することができます。

 訴訟を提起されると、訴状という書類が送付されてきます。

 また、支払督促が申し立てられた場合、支払督促という書類が送付されてきます。

 こういったものが送られてきた場合は、ご相談の際に訴状または支払督促をお持ちください。

 訴状または支払督促の内容を弁護士が確認することで、貸金業者等の名称や、残債務額、最後の返済日(期限の利益喪失日)、時効更新事由の有無等がわかります。

 そして、消滅時効が完成していることが判明したら、消滅時効の援用をすることができます。

 

3 貸金業者等から支払いを求める書面が送付されてきた場合

 貸金業者等は、訴訟を提起したり、支払督促の申立てをする前に、債務者の方に債務の返済を求める書面を送ることもあります。

 その場合は、貸金業者等から送付されてきた書面をご相談の際にご持参ください。

 その書面の内容を弁護士が確認することで、貸金業者等の名称や、残債務額、最後の返済日(期限の利益喪失日)、時効更新事由の有無等がわかることがあります

 この場合も、消滅時効が完成していると考えられている場合には、当該貸金業者等に対して、消滅時効の援用をします。

時効について相談するタイミング

文責:所長 弁護士 岩崎友哉

最終更新日:2024年08月01日

1 消滅時効はできる限りお早めにご相談されることをお勧めします

 消滅時効には、債務を消滅させる強力な効果があり、消滅時効の援用をすることによって借金の返済を免れることができます。

 もっとも、対応の仕方次第では、消滅時効の援用をすることができなくなってしまう可能性もあります。

 そのため、ご自分で何かしらの行動をする前に、できるだけ早く法律の専門家に消滅時効についてのご相談をいただき、適切なアドバイスを受けることによって、うっかり債務の存在の承認をしてしまうことや、債権者が訴訟を提起するきっかけを作ってしまうことを防ぐといったことができます。

 以下、それぞれについて詳しく説明します。

 

2 うっかり債務の存在の承認をしてしまうことを防ぐ

 実は、消滅時効は、たとえ完成するだけの期間が経過していても、援用という、消滅時効が完成している旨の意思表示をしない限り、効果を生じません。

 そして、援用をする前に債務の存在を認め、弁済をする意思があることを伝えてしまうと、消滅時効を援用することができなくなってしまうことがあります。

 債権者の中には、消滅時効が完成する期間が経過しており、中断(更新)事由もないことを知りながら、書面の送付や訴訟の提起などによって支払いを求めてくるところもあります。

 このとき、焦って債権者に対して返済の意思があることを伝えたり、返済をする旨の和解などをしてしまうと、以降の消滅時効の援用はできなくなってしまいます。

 もし返済を滞納してから長期間が経過している債権者から書面が送られてきたり、訴訟が提起されたりした場合には、まずは弁護士にご相談ください。

 法律の専門家である弁護士が、書面や訴状の内容を検討し、消滅時効の援用をするなど、適切な対応を行うことができます。

 

3 債権者が訴訟を提起するきっかけを作ってしまうことを防ぐ

 かつて貸金業者等から借り入れと返済をしていて、返済を滞納してから長い時間が経っていることは分かっているものの、いつから消滅時効のカウントが始まっているかはよく分からないということもあります。

 このような場合には、慎重な対応が必要です。

 最後に返済をしてから、明らかに5年以上が経過しているといえるような場合(借り入れ時期や相手によっては、10年以上が経過している場合)には、債権者に対して内容証明郵便等で消滅時効の援用をします。

 しかし、最後に返済をしてから現在に至るまでの期間が、消滅時効が完成する期間を超えているか否かわからないということもあります。

 このようなときには、いったん債権者に連絡をすることを保留します。

 債権者へ連絡をした時、もし消滅時効が完成していなかった場合、債権者が消滅時効完成前に訴訟を提起し、消滅時効の援用ができなくなってしまう可能性があるためです。

 こうした対応の判断をご自身でされることは難しい場合が多いかと思いますので、まずは弁護士にご相談ください。

時効について相談する際の弁護士の選び方

文責:所長 弁護士 岩崎友哉

最終更新日:2024年11月15日

1 債務整理を得意とする弁護士にご相談ください

 消滅時効についてのご相談は、消滅時効を含む債務整理の案件を得意分野とする弁護士にすべきであるといえます。

 あまり認識されていないことですが、法律にはとても多くの分野があるため、一人の弁護士がすべてのことについて精通するというのは、あまり現実的ではありません。

 債務整理の分野も同様であり、取り扱い業務の一つとして消滅時効という記載があっても、必ずしも得意分野とまで言えるものであるとは限りません。

 消滅時効は債務整理の一種でもありますので、まずは債務整理を重点的な取り扱い分野として、多数の案件を取り扱っている弁護士に相談するとよいと考えられます。

 

2 消滅時効は簡単ではない

 借入金の債務は、もし消滅時効が完成していたとしても、援用をしなければ返済義務はなくなりません。

 消滅時効の援用そのものは、それほど難しいことではありません。

 消滅時効が完成していることが確実といえる状況であれば、貸金業者等の債権者に対し、消滅時効を援用する旨の意思表示を記した内容証明郵便を送付することで終了します。

 一方で、ただ消滅時効の援用をすれば解決するとはいえない事案もあります。

 例えば、最後の返済の日(正確には期限の利益を喪失した日)から、消滅時効が完成するまでの期間が経過しているかの判断が難しいというケースが挙げられます。

 このような場合に、万一消滅時効が完成していないにもかかわらず消滅時効の援用をする旨の通知をしてしまうと、債権者が消滅時効の完成が近いことに気づいてしまい、反対に訴訟を提起するなどして消滅時効が更新されてしまう可能性があります。

 また、時効に関する法律は2020年4月1日に改正されました。

 この改正により、改正前に発生した債権と、改正後に発生した債権とでは、異なる対応が必要となることもあります。

 

3 消滅時効を得意とする弁護士を探すためのポイント

 このように判断が難しいケースでも適切に対応できるような、消滅時効を得意とする弁護士を探すためには、消滅時効の援用の取り扱い数に注目することをおすすめします。

 具体的には、弁護士を探す際に、事務所のウェブサイトなどを閲覧し、消滅時効に関する事件の解決数に着目するという方法があります。

 実際には、消滅時効の解決数を直接は記載していないこともありますので、そのような場合にはまず債務整理の解決数が多い弁護士を選んで相談し、その際に消滅時効の取扱数がどれくらいあるのかについて聞いてみるのもよいと考えられます。

受付時間

平日 9時~21時、土日祝 9時~18時
夜間・土日祝の相談も対応します
(要予約)

所在地

〒104-0061
東京都中央区
銀座1-19-14
GINZA ONE BUILDING8F

0120-41-2403

お問合せ・アクセス・地図

お役立ちリンク

PageTop